小児の感染症

お子さまは多くの感染症に罹患しやすいという特徴があります。そのため、できるだけ重症化するリスクを防ぐべく、様々な予防接種(ワクチン)を打つなどしていきます。ただ、それでも感染力が強い、ワクチンがないといったウイルス等などによって感染し、発症することがあります。小児が罹患しやすい代表的な感染症は以下の通りです。

小児が罹患しやすい感染症

インフルエンザ

インフルエンザとは

インフルエンザウイルスによって引き起こされる気道感染症です。同ウイルスは飛沫感染あるいは接触感染等によって感染するとされ、1~3日の潜伏期間を経てから発症するようになります。

主な症状ですが、38℃以上の高熱、鼻水、喉の痛み、頭痛など風邪の症状が現れるほか、全身倦怠感、食欲不振、関節痛や筋肉痛等がみられます。
約1週間の経過で軽快することが一般的です。呼吸器、循環器、腎臓などに慢性疾患を持つ患児では二次性の細菌感染症を起こしやすいことが知られています。中耳炎の合併、気管支喘息や熱性痙攣を併発することがあります。また、重篤な合併症として、急激に悪化するインフルエンザ脳炎・脳症が毎年50〜200人程度報告されています。

治療について

発症して48時間以内であれば、抗インフルエンザ薬として、ノイラミニダーゼ阻害薬(タミフル等)を使用することがあります。
症状をできるだけ和らげるための対症療法として、解熱剤や鼻水や喉の痛みを和らげる薬剤を使用していきます。学校保健安全法では、発症後5日が経過し、熱が下がってから2日(幼児は3日)が経過するまでは出席停止とされています。

おたふくかぜ

おたふくかぜとは

正式な疾患名は、流行性耳下腺炎です。ムンプスウイルスと呼ばれる病原体が原因で、飛沫感染もしくは接触感染によってうつるようになります。潜伏期間は2~3週間とされ、感染しても発症しない不顕性感染もあります。小児に感染者が多く、3~6歳の間に全患者数の6割程度を占め、4歳が最も多いとされます。

発症の際によくみられる症状ですが、両側性または片側性に耳下腺や顎下腺などが腫れていきます。腫れている部分を押す、唾液を飲み込むなどすると痛みも現れるようになります。腫れのピークは発症から48時間が経過した頃で、1週間程度は腫れが続きます。上記以外では、発熱、喉の痛みなどが出ます。

注意しなくてはならないのが合併症で、無菌性髄膜炎、精巣炎、膵炎、難聴などを発症することがあります。耳下腺等に腫れの症状が見受けられ、頭痛が激しい、嘔吐がみられる、高熱が続くなどがあれば、速やかにご受診されるようにしてください。

治療について

基本的に対症療法が中心となります。症状(頭痛、発熱、耳下腺の痛み 等)を抑える薬物療法として、解熱鎮痛薬などを使い、安静に過ごします。
効果的に予防するにはワクチンが唯一の方法になります。
学校保健安全法における取り扱いとして、耳下腺や顎下腺等に腫れがみられてから5日間が経過し、全身状態が良好になるまでは出席停止とされています。

水ぼうそう(水疱瘡)

水ぼうそうとは

ヘルペスウイルスの一種である水痘・帯状疱疹ウイルスに感染することで発症します。同ウイルスは感染力がとても強く、飛沫感染、空気感染、接触感染がその経路となっています。

主な症状ですが、感染後に2週間の潜伏期間を経てから発症するようになります。最初はかゆみを伴う赤い発疹がみられ、頭皮、体幹、四肢から全身に広がっていきます。紅斑、丘疹、水疱、痂皮のそれぞれの段階が混在することが特徴になります。発熱、倦怠感もみられるようになります(3日程度)。さらに発疹は、3~4日が経過すると水疱に変わり、やがて痂皮となって、最終的には自然と剥がれるようになります。痂皮になるまでは、発症から1週間程度かかります。

治療について

治療は主に抗ウイルス剤による治療を行います。皮膚症状(水疱等)に関しては、フェノール・亜鉛華リニメント、亜鉛華軟膏の外用を使用します。かゆみについては抗ヒスタミン薬、発熱には解熱薬が用いられます。このほか、とびひを併発しそうな場合は、抗菌薬の内服薬が使われることもあります。
第2種の感染症に定められており、学校保健安全法では全ての発疹が痂皮化するまで出席停止とされています。

ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナとは

エンテロウイルス属に属するウイルス(主にコクサッキーウイルス、エコーウイルス)に起因し、発熱と口腔粘膜疹を特徴とする急性のウイルス性咽頭炎で、主に夏季に流行する「夏かぜ」の代表的疾患です。
感染者の内訳では5歳以下の小児が全体の90%を占めます。感染力が強く、飛沫感染や接触感染が主な経路となっています。

主な症状ですが、感染後に2~4日程度経過してから発症するようになります。39~40℃の高熱、口腔内に小さな水疱がみられるほか、喉にできた水疱が破れて浅い潰瘍形成すると、強い痛みが現れます。したがって乳幼児であればミルクを飲むのを嫌がる、食事がとれないといった状態から脱水症になることがあります。なお熱については3日前後で下がるようになります。

治療について

治療に関しては、対症療法が中心になります。主に解熱鎮痛薬を使用し、熱や喉の痛みを抑えていきます。また喉の痛みによって脱水症状にならないよう水分補給も欠かさないようにします。一般的には4~5日ほどで軽快するようになります。
学校保健法では特に明確な規定はありません。ウイルスは症状が回復した後も便から排泄されますので、登校登園停止による園や学校での流行阻止効果は大きくないとされます。

手足口病

手足口病とは

コクサッキーA16、エンテロウイルス71などのエンテロウイルスにより引き起こされる急性ウイルス性発疹症です。夏の季節に発症しやすく、乳幼児が罹患しやすい病気です。2歳以下が約半数を占めます。
主な症状ですが、上記ウイルスに感染し3〜5日の潜伏期間を経て発症します。疾患名のごとく、手のひら、足の裏、口腔粘膜に水疱疹が現れるようになります。手足にできる水疱は、かゆみ、痛みなどの自覚症状は出にくいとされていますが、口内に発生した水疱は、潰れて浅い潰瘍を形成すると痛みが出るようになります。発熱は38℃以下のことが多く、軽度であることが多いです。まれにウイルス性髄膜炎などの中枢神経合併症に注意が必要です。

治療について

症状が強く出ている場合は、対症療法が中心となります。口腔内の痛みがある場合、脱水症に陥らないように水分補給が重要になります。元気がない、頭痛、嘔吐、高熱が続くような場合にはご相談ください。
学校保健法では特に明確な規定はありません。ウイルスは症状が回復した後も便から排泄されますので、登校登園停止による園や学校での流行阻止効果は大きくないとされます。

RSウイルス感染症

RSウイルス感染症とは

RSウイルスに接触感染、あるいは飛沫感染することで発症する呼吸器感染症です。感染してから2~8日程度の潜伏期間を経て、上気道(鼻腔、咽頭、喉頭)に炎症がみられ、発熱、鼻水、咳などかぜの症状がみられるようになります。これらが2~3日程度続いた後、さらに下気道(気管、気管支、肺)に炎症し、細気管支炎や肺炎を引き起こすことがあります。
2歳までにほぼ全ての小児が感染するといわれています。とくに乳幼児は、RSウイルスの感染が下気道まで及びやすいとされ、生後6ヶ月未満であれば重症化しやすいということがあります。特に1歳以下では中耳炎の合併が知られています。低出生体重児や心臓、呼吸器系に基礎疾患のある児、免疫不全のある児では重症化リスクが大きいため、要注意です。

治療について

治療は支持療法が中心になります。鼻水の吸引や吸入、去痰薬などを用います。また喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューの呼吸音)の状態がひどいとなれば、気管支拡張薬を使用する事があります。